北限のいちじく栽培地、大竹

秋田県の南西部に位置する、にかほ市。2005(平成17)年に由利郡仁賀保町・金浦町・象潟町の3町が合併し発足しました。金浦町の中心部より5kmほど離れた山間部に大竹集落があります。およそ100世帯の内、40戸が専業・兼業のいちじく農家であり、流通する県内産いちじくの約9割を栽培しています。

栽培が始まったのは昭和30年代。県内でも比較的温暖な地域といわれるにかほ市でも、標高の高い位置にある大竹集落は一年を通し気温の寒暖差が大きく、いちじく栽培は、“大竹より海に近いと海の潮風の影響”を受けてしまい、“山に近いと気温が低く育たない”とされ、商業栽培の地では北限と言われています。
加工に適した品種、ホワイトゼノア

いちじくの原産地はアラビア南部。国内の産地を見ても、愛知・和歌山・福岡などの比較的暖かい地方で栽培され、生で食すイメージのある果物です。
一方、秋田県にかほ市大竹集落で栽培されるいちじくはフランス原産の「ホワイトゼノア」。熟しても色がつかないので「白いちじく」とも呼ばれ、寒さに強く寒冷地での栽培向きです。また、高い糖度と強い繊維質を活かし、ジャムやコンポートなどの加熱加工に向いています。
秋田の保存食文化といちじく甘露煮

昔から農業が盛んな秋田県は、様々な野菜や果実を栽培してきました。秋田の冬はとても長く、雪に覆われ農業ができない期間にも美味しく作物を食べようと、先人たちは様々な工夫を凝らしてきました。その結果、いぶりがっこや鰰すしなどの保存食・発酵文化が発達しました。

保存食の基本は、食材を腐らせないことです。その方法として、塩に漬ける、乾燥させる、発酵させる、アルコールに漬ける、燻すなどがあります。秋に収穫したいちじくを冬の間食べられるように保存するためには、加工適性を含め、砂糖で甘く煮るという方法をとりました。
冷蔵・冷凍技術が発達した現代でもいちじくを甘露煮にする文化は残り、各家庭において母から娘へ、姑から嫁へと代々受け継がれています。毎年収穫時期になると、いちじく甘露煮を作る独特の香りが集落を包みます。
地域ブランド化を目指して


ホワイトゼノアを全てのメニューに使った「いちじくランチを楽しむ会」や廃校となった小学校が会場のマルシェイベント「いちじくいち」開催などを通して、少しずつにかほ市のいちじくの知名度が向上してきました。
更なる「大竹いちじく」の地域ブランド化と生産者の意識向上を目的に、平成31年、国の「地理的表示(GI)保護制度」に申請を行い、令和2年3月30日に登録されました。
いちじく栽培暦


にかほ市やJA秋田しんせい、由利地域振興局が行う年数回の講習会を開くことで、若手生産者や集落内外のいちじく栽培初心者へ技術指導を行っています。
また、出荷説明会ではJAや勘六商店が提示する出荷規格(サイズや熟度)を基に生産者同士で確認を行います。出荷反省会では、慰労会を兼ねて、その年の出来や収量、市場価格などを振り返ります。




















周囲の期待に応えながら、今後ますます広がりを見せる秋田県にかほ市の大竹いちじく。どうぞご注目ください!